ぶどうは、犬にとって中毒症状や病気を引き起こす可能性がある危険な果物です。最悪の場合は死に至る危険性もあるため、少量であっても与えないようにしてください。ぶどうを犬に与えることの危険性や、万が一食べてしまった場合の対処法などを知り、万が一の事態に備えましょう。
ぶどうを犬に与えてはいけない理由
犬にぶどうを食べさせてはいけない理由は、ぶどうに含まれる何らかの成分が犬の腎臓に作用し、急性腎不全を引き起こすためです。
腎臓は体の中にたまった老廃物や余分な水分を外へ出して、血液をきれいにする大切な器官。そのほかにも血液を産生するホルモンを分泌したり血圧を調整したりと、生きていくのに欠かせない臓器です。
犬がぶどうを摂取したことによりその腎臓が急速に障害を受け、最悪の場合死に至ります。ぶどう中毒に対し特定の薬があれば良いのですが、ぶどう中毒は未だ原因もわかっていないため、対症療法が主体となります。
また症状も、急速に症状を発症して治療に一切反応せず数日以内に死亡する症例もあれば、後遺症が残る症例、元気に回復する症例など犬によって個体差があります。
犬がぶどうを食べたときに起きる中毒症状
犬がぶどうを食べた場合の中毒症状を「ぶどう中毒」とも呼びます。主なぶどう中毒の症状としては、数時間以内の嘔吐や下痢、食欲低下などが挙げられます。そのほか、以下のような症状が犬に見られた場合は、ぶどう中毒を引き起こしている可能性があります。
<ぶどう中毒の症状>
・水を多く飲む
・食欲がない
・元気がない
・ぐったりしている
・嘔吐
・下痢
・腹痛
・尿がほとんど出ない
・口腔内の潰瘍
・けいれん
など
犬が食べてはいけないぶどうの量や種類
犬がぶどうを食べたときの絶対的な致死量はわかっていません。
2005年に発表されたアメリカの論文では、犬の体重1kgあたり4gのぶどうを摂取した後に中毒症状を起こした例が発表されています。一方で、岩手県獣医師会で発表された論文 では、230gのぶどうを食べた犬が2年経っても元気に生活しているという例も報告されており、個体差があります。
いずれにしても、犬にはぶどうを少量であっても与えないことが大切です。
ぶどうの加工品も犬へ食べさせてはいけない
ぶどうのどの成分が犬の中毒を引き起こすかがわかっていないため、犬には生のぶどうだけではなく、ぶどうの加工品も与えないようにしましょう。ぶどうの加工品には、レーズンやレーズンパン、ぶどうジュース、ぶどうジャムなどがあります。
犬がぶどうを食べてしまったら動物病院へ
犬がぶどうを食べてしまったら、症状の有無によらず、動物病院を受診してください。一見問題なさそうに見えても、後から中毒症状が出てくる可能性もあるためです。とくに、ぶどうを大量に食べてしまった場合や、嘔吐や下痢といった普段と異なる症状がある場合は命にかかわることもあるため、夜間や休日であってもすぐに動物病院を受診しましょう。
動物病院では、犬の胃の中のぶどうの量を少しでも減らすために吐かせる治療を行うのが一般的です。また、血液検査で状態を確認しながら、毒素吸着剤の投与、輸液療法やリン吸着剤、尿道にカテーテルを通して尿量を測定する尿道カテーテルの設置、血液を入れ替える透析治療などを行うこともあります。
動物病院で適切な治療ができるよう、ぶどうを食べた時間や、食べたぶどうの量、状態、種類などを、獣医へ詳しく伝えられるようにしておいてください。 犬がぶどうを食べてしまった場合、飼い主が家庭でできる応急措置は基本的にありません。犬にぶどうを無理やり吐かせようとすると、症状が悪化する可能性もあるため、控えてください。
犬のぶどうの誤食を予防する方法
犬のぶどうの誤食を予防するには、拾い食いや盗み食いをしないよう、日ごろからしつけておくことが大切です。そのうえで、愛犬がぶどうを食べてしまう環境をつくらないように努めましょう。
たとえば、飼い主がぶどうを食べるときは、愛犬の手が届かない高さのテーブルに置くなどして、目を離さないようにします。また、ぶどうの皮にも中毒症状を引き起こす成分が含まれている可能性があるため、食べた後のぶどうの皮を置きっぱなしにしないようにしてください。
また、ぶどうの木が生えている場所の下には、ぶどうが落ちている可能性があります。ぶどう狩りに行くときは犬を別の場所で待たせておく、ぶどうの木がある散歩コースは避けるといった意識をすることが大切です。